不毛な争い招く「子どもの権利に関する条例」、慎重な議論を~代表発行人の千思万考
- むさしのニュース代表発行人
- 2022年12月10日
- 読了時間: 3分
去る11月26日に吉祥寺東コミュニティセンターで開催された「武蔵野市の子どもの権利に関する条例」の地域フォーラムに参加しました。会合は冒頭から武蔵野市の担当課職員による資料の棒読みから始まりました。市民の関心は条例の内容にあるにもかかわらず、市の担当者は手続きの正当性を主張し、条例設置の目標期限(2023年4月)を守る事に躍起になっているように感じました。これまで市民から指摘されてきた立法趣旨の乏しさ、「休む権利」への疑問、オンブズパーソン制度の実効性など条例の内容に触れることはなく、非常に歯がゆい説明に終始しました。
市側の説明後、参加者からの質疑応答の時間となりました。その中で「こどもの権利条約の第5条にある子供と親の関係についての記述の内容は、武蔵野市の条例にも引き継がれるべきではないか」との意見もありました。国連の条約と市の条例の整合性は大変重要な論点であるにもかかわらず、市側から回答はありませんでした。また、武蔵野市は子どもの権利条例の素案作成にあたり、有識者検討委員会を立ち上げましたが、市民からは「この条例が抱える問題の根本的原因は条例検討委員会の委員長に喜多明人氏を起用したことにある」との厳しい意見も突き付けられました。
喜多氏を起用したことについて拙速に是非を論じることは控えたいと思いますが、喜多氏は人権派の代表的な教育学者と認識されていることは事実でしょう。喜多氏は「人権派サイドからは、従来のわが国の教育体制や「子ども」観が、パターナリズム以外の何物でもなく、それも復古主義的な様相を帯びて理解される。これに対し、「保守層」は子どもを「教育的」に「保護」する事こそ、子どもの人権を保障することであるとしている。こうして両者は抜き難く対立することになる。だが、こうした価値観の対立にはそれぞれの背景や基盤があり、ある種の「神々の論争」であるので、条例の立案過程に有用だとは思われない」と述べているそうです。片方に偏ったイデオロギーに基づいて作られた条例は必ずや市民の分断を招きます。この条例に基づいて設置される「オンブズマン制度」、「子どもの権利擁護委員」制度などは市民同士の分断と争いの火種になりかねません。武蔵野市は住民投票条例を巡って市民間が分断され、不毛な争いが繰り広げられましたが、イデオロギー論争はもうこりごりだと考える市民は多いのではないでしょうか。
わが国が子どもの権利条約を批准してから20年以上が経過しますが、子どもの権利条例を定めた地方自治体は全体の4%にも満たない状況を鑑みると、条例制定に慎重な自治体が多いことは明らかです。武蔵野市が制定を目指すならば、条例の本質をよく考え、期限ありきではなくもっと時間をかけて検討すべきです。幅広い市民の意見を聞くため、住民討議会を開いて熟議を重ねるのも一つのやり方です。左派イデオロギー市政のアクセサリーのような条例はもういい加減にして欲しいものです。
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