0.2%になる意義、説明を 武蔵野市の住民投票条例
- 武蔵野市政ウォッチャーより再構成
- 2022年1月3日
- 読了時間: 3分
更新日:2022年5月3日
武蔵野市の住民投票条例案で大きな注目を集めたのが外国人投票権でした。住民投票で外国人に投票権を付与した自治体でのその範囲はさまざまです。反対は差別主義との片づけるのではなく、憲法や最高裁判例、安全保障など広い観点から冷静な議論が必要です。
■日本国籍と同条件はわずか3自治体
■憲法15条との整合性は?
■重要な安全保障の観点
「在留3か月」は極めて少数派
国内の1741自治体のうち、住民投票条例を導入したのはわずか4%強の78自治体にすぎません。このうち、なんらかの形で外国人に投票権を認めたのは43自治体です。対象を見ると①永住外国人28自治体、②3年以上在留13自治体、③3か月以上在留3自治体となります。つまり日本国籍と同条件で投票権を与えているのは、全体のわずか0.2%にすぎません。
武蔵野市は「3か月以上住民登録した外国人に投票権を与えるのは他の自治体でも前例がある」と主張しました。前例があるのは事実ですが全体のわずか0.2%であり極めて希なケースなのが実際のところです。武蔵野市が極めて希なケースを導入するならば、「外国籍住民を排除する合理的な理由は見当たらない」と片づけるのではなく、その積極的かつ合理的な理由を挙げ、市民の合意形成を図る必要があります。
憲法15条では日本国民の権利
日本国憲法では、公務員の選定は日本国民の権利としており、日本国籍を持つものが参政権を持ちます。1995年の最高裁判例では、公務員の選定権・地方選挙権は外国人に保障したものということはできないとしつつ、傍論で「永住者等の外国人への法律上の付与は憲法上禁止されているものでない」としました。つまるところ、国政への参政権は認められないが、永住外国人に限って地方参政権は可能と解釈されています。投票結果が政治的拘束力を持つ住民投票は、実質的な参政権ととらえることができ、住民投票権の対象は永住外国人までとするのが判例と整合した解釈といえるのではないでしょうか。
実際、外国人に住民投票権を与えた43自治体のうち、半数以上の28自治体が永住外国人を対象としているのはこの判例に沿ったためと思われます。また、外国人在留期間の考え方の指標として、帰化に必要な居住要件は最短3年、原則5年とされています。住民投票権の付与対象を3年以上在留とした自治体は、帰化に準ずる条件として3年と区切ったとみられ、こちらも一定の合理性が見いだせます。
住民投票でクリミア併合
外国人に対する参政権に一定の制限を設けているのは国の安全保障に直結するためです。最近情勢が緊迫しているウクライナは、親ロシア派の住民が多く住むクリミアで住民投票が行われ独立を宣言しました。武蔵野市の住民投票条例で賛成派は「外国人が大挙して押し寄せて乗っ取るのは荒唐無稽な話」と一刀両断にしましたが、世界では住民投票でこのようなことが起きています。外国人投票権を巡る問題は、差別か否かの議論になりがちですが、憲法や判例、国際情勢に照らして冷静に議論しなければなりません。
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