市議会の良識はどこへ? 品位向上を求める陳情
- 武蔵野市政ウォッチャーより再構成
- 2022年3月7日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年6月8日
「武蔵野市議会の品位向上を求める陳情」と題した前代未聞の陳情が令和4年(2022年)3月3日の議会運営委員会で審議されました。ことの発端は「武蔵野市の住民投票条例を考える会」の金子代表が市議会総務委員会で2021年12月に住民投票条例を巡る陳情をしたところ、山本あつし市議から陳述中にヤジを浴びせられたというものです。市民にヤジを飛ばす行為は市民代表である市議の行為としては不適切であり、市政への市民参加を委縮させかねず厳に慎むべきですが、一部の市議から見える光景はいささか異なっていたようです。
■問題となったヤジの内容は?
■山本市議の追及には及び腰
■陳情は採択されたものの・・・
陳述中に「原因はお前だよ」
武蔵野市の住民投票条例を考える会の陳情書によると、2021年12月13日の総務委員会で代表の金子宗德さんが「住民投票条例をめぐり武蔵野市は混乱している」と指摘したところ、自治と共生の山本あつし市議が「原因はお前だよ」とヤジを飛ばしました。総務委員長の深沢達也市議(立憲民主ネット)は制止や注意をしませんでした。同会は極めて不適切な行為だとして、山本市議への問責決議の採択と市議全員に対して綱紀粛正に努めるよう求めました。武蔵野市議会では陳情した市民の陳述は休憩扱いのため、市議会のインターネット中継では当該発言を確認することはできません。議会運営委員会の議事録では山本市議が謝罪したとの記述があるため、ヤジを飛ばした点については山本市議本人も認めているものと推察されます。
責任追及せず「擁護派」に配慮
議会運営委員会の議事録によると、土屋恵美子議長が「不規則発言に対しては厳しく注意はしてきておりましたけれども、こういう陳情が上がったことは大変残念」と述べ、品格に欠けるような発言があった際には個人的に注意をしていると苦言を呈しました。ワクワク働くの宮代一利市議は「不規則発言は一切認められるものではない」「議員全員で議会をもっとよくしていかなければいけない、綱紀粛正しましょうとの意見をしっかりと受け止める必要がある」とヤジに対しては厳しい姿勢で臨むべきと主張しました。
議場での不規則発言は市議会会議規則で禁止されており、市議会の綱紀粛正を求める陳情はどの議員も表立っては反対しにくい内容です。しかしながら山本市議にイデオロギーの近い議員からは「問責決議を採択することを求める陳情は過去にあったのか」(日本共産党の橋本しげき市議)「武蔵野市議会議員になって15年ほどになるが、問責決議は過去2例しかない」(自治と共生の内山さと子市議)など問責決議について疑問が呈されました。立憲民主ネットの西園寺みきこ市議からは「個々の発言、1人の議員の発言に関して陳情という形で議論するのはふさわしいのか、なじまないのではないか」と陳情そのものを否定するような発言すらあり、山本市議の発言の責任追及とは程遠い議論となりました。
お茶濁しの結末
こうした発言に押される形で自由民主・市民クラブの与座武市議は「議員の賞罰に関しては議会内自治によるものであり、(山本市議が)謝罪していることから問責決議の提出には至らないと判断した。今後も市民の疑念を招くことことがないよう綱紀粛正に努めるとのと意見付き採択を主張する」と提案。問責決議の採択を見送り、山本市議に擁護的な市議も賛成できる内容に落としどころを図りました。
このような経緯で意見付きとはいえ陳情が採択されたものの2つの課題が残りました。1つは議員の処分はあくまで議員間で決めるものであり、市民の意見には左右されたくないとの議会側の強い意向と、2つ目は山本市議の謝罪の対象がはっきりとしなかった点です。武蔵野市の住民投票条例を考える会の金子代表は「山本市議から謝罪を受けていない」と話しており、山本市議の謝罪はあくまで不規則発言により議会に混乱を招いた点にとどまっていると推測されます。
ヤジを巡っては、SNSに「野次の定義は考えないとならない」と投稿する立憲民主党の市議もあり、議員の間でとらえ方に温度差があります。法律や条令、議会の規則で縛れないから規制できないとの考え方ではなく、他人の発言中は静かに聞くという当たり前のことを各議員は徹底していただきたいと思います。条例など市民生活に影響を及ぼす事項を決める権限を持つ市議は、たとえ考え方が合わなかったとしても、正式な手続きを踏んで議会で発言機会を得た市民の話は静かに聞くのは当然です。市民の意見に異論があるなら市議は質問や討議で発言をすれば良いのです。山本市議は陳述を妨害された金子さんに謝罪するのが筋ではないでしょうか。
<おことわり>武蔵野市政ウオッチャーに2022年3月7日掲載の内容を加筆修正しました。
「住民投票条例を考える会」の陳情書
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